2019年01月27日

3セット型区別符の意味

イメージ改2.jpgイメージ-1.jpg2018年6月20日の当ブログ記事で、海軍軍事郵便のアドレスとして使われる区別府に「3セット型」とも言うべき新タイプのあることを報告しました。区別符はふつう、片仮名「ウ」「テ」「イ」「セ」のいずれか1文字と漢数字2文字との文字列を1セットとし、文字列2セットをつなげて所在地(第1セット)と部隊名(第2セット)を表すことになっています。この他に1セット多い第3セットのある特例型も存在する(分派の部隊を除く)ことが分かったのです。

今回その「3セット型区別符」の第2例目を発信・着信の両例で入手しました(上図)。まったく別人間の発着信なので誤記や偶然の疑いがありません。使用例が増えたことで、「3セット型」の意味と性格を確定することができたと思います。以下に続報としてお伝えします。

イメージ改.jpg今回入手したアドレス表記は「横須賀局気付ウ83ウ84ウ187」というものです。3セットある区別符は、次を表しています。
 ①ウ83:ヤルート島イメージ
 ②ウ84:第10海軍軍用郵便所第6派出所
 ③ウ187:横須賀鎮守府第6特別陸戦隊=横鎮6特

特別陸戦隊は海軍の陸上戦闘専門部隊で、各鎮守府に直属して機動的に行動します。転戦がひんぱんで定まった駐屯地がないので、他の海軍陸上部隊と違って所在地は常に流動的です。特別陸戦隊のアドレス表記は部隊長名を使うなど例外的なものが多く、収集家泣かせの常連です。

一方、厚生省の「恩給年加算調書」によると、横鎮6特は1942年8月24日から43年2月15日までギルバート諸島(正確にはタラワ環礁のベティオ島)に派遣されていたことが分かっています。この期間中ギルバート諸島には海軍の郵便機関は未開設で、区別符さえありませんでした。タラワに所在地区別符(ウ66)が指定されたのは横鎮6特が去った後でした。

区別符がない地区の部隊から発信する郵便のアドレスはどう書けばよいでしょうか。最寄りの「海軍軍用郵便所気付」とするのが合理的です。当時、ギルバート諸島直近の郵便所はヤルート島の第10郵便所第6派出所(部隊区別符ウ84)でした。こうして、「タラワの横鎮6特」は「ウ84気付ウ187」を得たはずです。

区別符は「気付」を省略する通例なので、これは「ウ84ウ187」となります。ところが「ウ84」は既にグリーニッチの所在地区別符になっていました。部隊名を所在地名と誤解されないよう、派出所のあるヤルート島を表す区別符「ウ83」を頭に付け加えたのでしょう。結果として「ウ83ウ84ウ187」になりました。このような3セット型アドレス表記は「区別符未設定地区の臨時特例」と解釈できます。

前回記事の「呉局気付セ45セ41ウ372」のケースは、他からの転入部隊が所属する上位の部隊名を第2セット(セ41)として加えた例でした。共通して言えるのは、移動・転属部隊や区別符未設定地の部隊が、「気付」の意味で所属上位部隊や直近の郵便所の部隊区別符を第2セットとして加えていることです。

これらを類型化して示すと、次のようになります。
・①所在地区別符+②所属上位部隊区別符+③当該部隊区別符(前回例)
・①所在地区別符+②直近郵便所の部隊区別符+③当該部隊区別符(今回例)

3セット型アドレス表記は海軍の郵便物取扱例規にも終始載りませんでした。必要に迫られた現場がひねり出した「知恵の産物」とも言えるでしょう。
posted by GANさん at 03:18| Comment(0) | 軍事郵便(海軍) | 更新情報をチェックする