2020年06月30日

電報送達紙用櫛型機械印

電報用機械印  札幌.jpg「郵便印」という概念は昔から「郵便逓送に関連して郵便物に押された印」とする考え方が一般的です。GANはこれは「狭義の郵便印」とし、「広義の郵便印」として、為替貯金印、電信電話印も加えることを提唱します。つまり、郵便印とは広義には郵便専用印、為替貯金印、電信電話印から成ります。

などという理屈はともかくとして、これまで「非郵便印」などとあたかも2級市民並みの不名誉な呼ばれ方で一括りにされてきた印の一つをお目に掛けます。左図は最近ネットで入手した、札幌局が配達した電報の送達紙です。右下部に大正13年5月17日C欄★3個、下部5本波線付き櫛型印(下図)が青黒色で押されています。電報用機械印  札幌-2.jpg

近年刊行された鳴美の『郵便消印百科事典』にも郵趣協会の『日本郵便印ハンドブック』にも採録されていませんが、載せないのは惜しい。浜松の消印研究家ですでに故人となられた池田進氏は自著『日本消印事典③ 櫛型日付印』(1972年)と『櫛型日付印詳説(下巻)』(1976年)で(恐らく初めて)発表しています。

舌状切込.jpg池田氏の調査によると、この日付印は逓信省工務局が試作した「電報送達紙自動封緘押印機」に取り付けられた印顆によるもので、大正10(1921)年ごろから昭和初期にかけて試用されました。宛名を表に送達紙を四つ折りし、上部に約1㎝の舌状切り込みを入れて折り込む(左図は送達紙右上部の舌状切り込みを折ったもの)と、確かに封緘したことになります。

電文を受信、印字した送達紙をこの機械に掛けると、自動的に押印した上で四つ折りし、切込封緘まで施されてすぐに配達できる形で出てきたのでしょう。波形線は郵便用の唐草印に似ていますが、データサイクル部が櫛型なのがユニークです。この点から平川式機械印に近い、と言うべきかも知れません。使用例が少ないのは試験結果が思わしくなかったことを示唆しているようです。

池田氏は横浜、名古屋(共にC欄★3個)、大阪中央、神戸中央局(共にC欄「電信局」)の印影を示し、他に京都中央局の使用もあるそうです。今回の札幌局は6局目の使用例となります。C欄表示形式に2種類あるのは、★3個は郵便局の電信課が、「電信局」は電信専用局が扱った区分を示すとGANは考えます。

櫛型電信機械印030623.jpg追記 】(2020.07.06) この記事に永富様からコメントを頂き、それがきっかけでこの印の試用告知(右図)が昭和3(1928)年6月23日付「逓信公報」に掲載されていたことを初めて知りました。告知によれば、他に少なくとも東京中央電信局、同局日本橋分室、神戸局でも使われたことが分かります。〈C欄★3個は(普通)郵便局、「電信局」は電信専用局の使用〉というGANの推測も確認がとれました。〈大正10(1921)年ごろから昭和初期にかけて試用〉という上記池田氏の記述は再検討の必要があるのかも知れません。

《電報送達紙自動封緘押印機についての説明は、池田氏の「機械式櫛型電信印」(静岡コレクターズクラブ機関誌『しずおか』1987年1月号所載)によりました。》
posted by GANさん at 23:44| Comment(2) | 郵便印 | 更新情報をチェックする