2014年05月31日

米軍検閲済み演劇台本

HAKODATE.jpg今日のマテリアルは近着のネット落札品ですが、郵便物ではありません。しかし、郵便と密接な関係にある米占領軍による検閲資料です。

藁半紙を袋綴じ状に折った半面に、次のように筆書されています。
検閲台本/防犯劇「戦慄の街」2幕1場追加分/函館市警察署捜査課/(氏名)/新軽演劇集団(これだけは万年筆書き)

そして、米軍が押したPC検閲印(俗称「金魚鉢」)と「FILE No. H-503」のスタンプがあります。検閲官番号は「C.C.D.J-5013」です。右辺には紙縒(こより)などで綴じられていたような綴じ跡の破れがあります。

これらから推測すると、これは、米軍検閲当局に提出された演劇台本の表紙のようです。勧進元は函館市警察署。ペンに自信のあるデカさんあたりが防犯啓発用に書き下ろした脚本なのでしょう。1947(昭和22)-54年の間、米占領軍の指示により消防と同様に警察も自治体(市町村)が自前で運営しました。戦前の道警函館署が一時は函館市警察署として独立していたのです。

検閲印は郵便検閲用と同じ形式ですが、検閲日の記入位置が「金魚鉢」の中ではなく、下部に書かれている点で大きく異なります。「金魚鉢」の右側に接して押されたプロ野球球団のマークと酷似した「YG」の小型印は何を意味するのか、不明です。

森勝太郎氏「占領下の日本に於ける連合軍の郵便検閲」(切手研究会創立5周年記念論文集所載)によると、連合国軍総司令部(G.H.Q.)の1部門である民間情報部は、外局として民間検閲部(C.C.D.)を東京に置きました。

C.C.D.はさらに下部機関として東京、大阪、福岡など6ヵ所に地方検閲部とその分局を配置し、地方検閲部の通信課で郵便と電報・電話を検閲、印刷舞台放送課で新聞・雑誌・図書と映画・演劇、それに放送の検閲を実施させました。当時のメディアすべてが網羅されています。

この演劇台本も、札幌市の北海道農業会館にあった民間検閲局第4支所(福島鋳郎氏「占領下における検閲政策とその実態」による。森氏は「第4地方検閲部」と訳す)に提出され、49(昭和24)年4月20日に検閲を通過、上演許可となったのでしょう。

森氏と裏田稔氏(『占領軍の郵便検閲と郵趣』)は膨大な量の検閲郵便物に押されている検閲官番号を調査しました。その結果、ほとんどの番号が連続して使われているのに、5000番台と5100番台は、郵便検閲用には使われていず、スッポリ抜け落ちていることが分かりました。

裏田氏は一方で、「C.C.D.J-5001」が雑誌検閲に使われていることを著書で発表しています。今回の5013が演劇検閲に使われている事実と併せ、5000~5099番は通信課でなく印刷舞台放送課の検閲官に割り当てられたと推測することが可能でしょう。

森氏は「金魚鉢」検閲印の「PC」を「Post Censor(郵便検閲)」の略だと述べています。しかし、雑誌や演劇の検閲にも使われていることから、これは誤解だったことになります。やはり「Passed Censor(検閲済み)」が正しいのではないでしょうか。つまり「検閲を通過したので配布・流通を許可する」意味と受け取るべきだと思います。

小さな知見ですが、新たに付け加わることで不明な点の多い米軍検閲が少しずつでも実態解明に近づけばいいな、とGANは思います。
posted by GANさん at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 郵便検閲 | 更新情報をチェックする
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