2016年05月06日

「ポナペ加刷」の真実

1119.jpg今月末から来月にかけてニューヨークで開かれる「世界スタンプショウ」とは、よほど大きなイベントなのでしょうか。この催しに向けて欧米の主要な切手商やオークションハウスがたくさんの売り立てカタログを出しています。

珍品・稀品を売り物にしている高名な米国オークションハウスが5月5日にオンラインしたカタログに数点のひどい出品物を見かけました。ドイツ切手に英文タイプで加刷し、日本の艦船郵便所印が押された、いわゆる「ポナペ加刷」です。戦前から存在は知られていましたが、100年後の今日までホンモノ面の厚顔さにあきれました。

図示したものはその一つ、ドイツ・カロリン群島用の10ペニヒ連合はがきです。印面に「I.J.O./Ponape/4 sen」の3行がタイプ印字され、ポナペ艦船郵便所で1916(大正5)年7月14日に引受けた島内有料軍事郵便、という体裁をとっています。料金が「2 sen」加刷のものもあります。これで下値が1,500ドル!

1115.jpg他に、「Japan/ocupy」と2行の同じタイプ加刷のあるカイゼルのヨット切手のオンピース2点も出ています。「ocupy」は英語「occupy(占領する)」のお粗末な誤りで、英語ネイティブがこのようなエラーを重ねるとは考えられません。日本人かドイツ人の製作であることを示唆しています。これから類推して、はがきの加刷「I.J.O.」は「Imperial Japanese Occupied(日本帝国占領下の)」の略語と思わせたかったようです。

幸い、第1次大戦中の日本海軍の南洋占領諸島における郵便活動については当局の詳しい報告が残っていて、今日ではアジア歴史資料センターを通じてだれでも自由にアクセスできます。それによっても、現地で切手類が不足したとか、そのためにドイツ郵政の切手類を再利用したなどの事実は全くありません。

南洋諸島の軍政期に、はがき料金が2銭や4銭だった事実もなく、郵便史上の事実にまったく反する存在です。これら一連のロットがすべて空中楼閣的なニセモノであると断定できます。郵便史上の知見からの疑義に何の反論も出来ないという点では、土屋理義氏らのいわゆる「泰緬鉄道郵便もの」と同工異曲の偽造品です。

お笑いなのは、これらのロットには10年ほど前にEicheleとかSchlesingerなる人が「真正品」と鑑定していることです。いったい何を根拠にそんな判断を下せたのでしょうか。2人がどれほど権威あるお方か、筆者は不明にして存じません。が、日本郵便史のイロハの「イ」も知らないような人たちに鑑定能力や資格などないことだけは確かです。
posted by GANさん at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ニセモノ列伝 | 更新情報をチェックする
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