2016年05月30日

乃木将軍、別の凹版習作

乃木希典.jpg郵便切手のエッセイ(この場合は試作というより習作に近い)として凹版印刷された乃木将軍の肖像です。「内閣印刷局創立70年記念試作品集」全17葉中の1枚で、最近のネットオークションで入手しました。

『内閣印刷局七十年史』によると、1941(昭和16)年11月10日に内閣印刷局創立70年記念式が東京の印刷局滝野川分室で開かれました。式典に出席した来賓と印刷局職員の計300人余りに記念品としてこの試作品集が配られました。製作数は500部以下かと思われます。

将軍の肖像は印刷局技師(後に彫刻課長)の加藤倉吉が鋼板にビュラン彫刻した原版から直刷したものです。B5判、厚手乃木希典-2.jpgクリーム色のいわゆる「局紙」に黒色で、3.5㎝×4㎝ほどの大きさに印刷されています。下部には篆書で「乃木希典」の名前も入っています。

試作品集には他にも、記念絵葉書になった「帝国議会議事堂」など加藤の作品3点が含まれています。4年前の1937年には彼の彫刻を原画とした別の乃木将軍像が昭和切手第1号の、いわゆる「乃木2銭」として発行されていました。式典当時の加藤は47歳前後で、凹版彫刻者として脂の乗りきっていた時期と言えるでしょう。

乃木将軍肖像切手のエッセイとしては、東京印刷同業組合編『日本印刷大観』(1938年)中にベートーベン像と並んで刷り込まれたものがよく知られています。発行部数はこの試作品集より1桁(あるいは2桁)多いと思いますが、こちらも加藤の原版彫刻ではなかったでしょうか。

3種の乃木将軍像の中で、この試作品集のものが最も「乃木希典らしさ」を表していて、筆者は好きです。右にわずかに首を傾けたポーズが、陸軍大将にして詩人の側面をも併せ持つ将軍の柔らかな人格を表現していると思います。おだやかな眼と意思的な口元も印象的です。

実際に郵便切手にする場合には、面積でこの4分の1以下への縮刻を迫られます。さらに、「乃木2銭」のように凸版印刷に変えたら、これらの印象も損なわれるかも知れません。しかし、この作品では見応え十分です。将軍の左目周辺の描線を拡大してみました。素人目にも加藤の彫刻刀の精密な切れ味がうかがえます。
posted by GANさん at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 乃木将軍 | 更新情報をチェックする
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