2017年09月17日

神田『野戦局々名目録』

局名録01.jpg局名録02.jpg100年以上前の郵趣の大先輩がまとめた我が国初の軍事郵便研究書を最近のヤフオクで入手しました。1913年(大正2)に神田柳吉氏が自家出版した『野戦局々名目録』です。存在は知られていましたが、実物が世に出たのは、少なくとも戦後は、初めてではないでしょうか。

これは小型の和本で、上質な和紙に活版印刷され紺色の平紐で綴じられています。判型はJIS規格以前の菊判の半裁というのでしょうか、15.6×11.5㎝でA6判とB6判の間です。表紙を除く本文15葉(30ページ)、うち2葉は挿絵です。奥付に「大正2年5月26日発行、発行者・神田柳吉」と記されています。

局名録03.jpg内容は日清・日露戦争と明治36年大演習で実際に使われた野戦局(艦船郵便所を含む)印の局名リストが主体です。附録として、日露戦争の野戦局で使われた朱色と紫色の色変わり印、記念印のリストもあります。日清戦争で20局、大演習の全6局、日露戦争では164局もの局名が挙げられています。

日露戦争の野戦局が全廃された1907年(明治40)からわずか6年後でこれだけの局種・局名を集めたとは、大きな驚きです。神田氏は他にも郵便日附印、記念日附印(特印)使用の公達、特設局開設告示、郵便税消印番号印(記番印)リスト等々を同じ体裁で続々と自家出版しました。日本郵便印・郵便史研究の偉大な先蹤者です。

印刷技術上の制約からか、この本には印影図が採録されていません。代わりに、軍名、日付、局名を2本の区画線で3段に区切って丸二型野戦局印を説明しています(上図左ページ)。神田氏は後にこの本の増補改訂版とも言うべき「野戦郵便局日附印形式及局名」を郵趣誌『郵楽』に連載(1916-7年)し、そこでふんだんに印影写真を載せました。

この本は神田氏の自家出版本の大部分を収めている郵政博物館資料センター(旧「逓博」)にもありません。吉田景保氏の労作『日本の郵趣文献目録』(1973年)にはタイトルなどが採録されていますが、どうも現物は見ていないようです。題名、編者名がやや不正確な上、消印大好き人間だった吉田氏が内容に一言も触れていないのはヘンだからです。

以上のようなわけで、この『野戦局々名目録』は単に稀覯本というだけでなく、GANにとっては先達の足跡をたどる上で欠かせない第一着の文献です。大事にしたいと思います。
posted by GANさん at 21:54| Comment(0) | 文献・論文 | 更新情報をチェックする
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