2018年07月26日

カルトール印刷切手秘話

A.Kobayashi.JPG全日本切手展が開催中の7月21日に切手研究会の2017年度総会が東京・浅草の都立産業貿易センター台東館で開かれ、GANも参加してきました。

出席者18人。会計、会報編集、三井文庫などいつもの報告が坦々と続きました。その後の講演で、小林彰氏(写真の右端)の「日本郵便とISP(Cartor & Walsall)」が圧巻でした。

小林氏といえば、マダガスカル切手やフランス横浜局などの研究者・収集家として著名です。しかし、現在の立場はなんと、フランスの証券印刷会社カルトール(Cartor Security Printing)の日本代表だというのです。これには正直、ブッタマゲました。左下は小林氏の名刺。中央の実際に「全型目打」が施された大きな社名ロゴがおしゃれです。

名刺表.jpgカルトール社は昨年、5円ニホンザル、30円キタキツネなど日本の普通切手5種を製造しました。従来の国立印刷局製同図案のグラビア印刷切手と比べ、オフセットで刷った同社切手の精巧な出来栄えが評判になっていることは、門外漢のGANにも聞こえていました。

日本のコレクターにとって、これまで「オフセット」は戦中・戦後の混乱期に製造された3次昭和や新昭和切手を思い起こさせ、粗悪切手の代名詞でした。そんな印象を逆転させたカルトールとは何か。GANは軽オフセット機で印刷屋を営んだ経験もあり、大きな興味です。

小林氏のお話は当事者ならではの「ここ限り」の秘話満載で、講演終了後も会員が取り囲み製造技術上の質問が絶えませんでした。記憶の限りで一部をご紹介します。

・日本郵政は郵便切手製造の単価低減、「ガラパゴス化」回避を図って国立印刷局、凸版印刷の国内2社以外の海外印刷会社にも2004年から入札参加を認めた。現在までに3社が資格を得ており、今後もこれら海外印刷の普通切手が出現する可能性がある。
 1、ISP(仏系カルトール社と英系ウォルソール社の持株会社、2004年)
 2、Enschede エンスケデ(オランダ、2013年)
 3、Philaposte フィラポスト(フランス、2015年)

・日本の普通切手は印刷局が独占製造してきたが、2016年に外国企業で初めてカルトールが受注し、17年度に1、5、50円と20、30円の2期に分けて納入。18年度も同額面を納入予定。同社の普通切手シェア4-5%。

・日本郵政の契約条件は「印刷様式はグラビアまたはオフセット印刷。オフセットの場合は350線以上」。コスト上の損益分岐点は2,000万枚で、以下ならオフセット、以上はグラビアが有利。カルトールはオフセット専門なので、450線で製版し、平台オフセット機で(枚葉紙に)刷った。650線まで精密化する技術がある。

・発注条件に「印刷局製を見本に、全く同じものを作れ」。ヨーロッパ式の削り取り式目打は使えず、日本独特の針穴穿孔式目打や日本とヨーロッパで色調が異なる印刷インクの調整などで苦心した。

・刷版(いわゆる「実用版」)は窓口シート2×2の4面掛けで、上2面と下2面は頭合わせ。刷版中央部にあったカラーマークは裁断すれば4面ともシート上部に残るので、カラーマークの下付きは存在しない。

【追記】(1919.02.16)別記コメントを山崎氏から頂いてGANの思い違いが判明しましたので、この記事の下から3行目の最後から次行の初めにかけて次のように訂正します。なお、カラーマークは4個面のすべてで4番切手に付いています。
 誤「‥‥上2面と下2面は頭合わせ。刷版中央部にあったカラーマークは‥‥」
 正「‥‥上2面と下2面はケツ(尻)合わせ。刷版最上部と最下部のカラーマークは‥‥」
posted by GANさん at 02:53| Comment(2) | 雑観・雑評 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
貴重な話を公開していただき、ありがとうございます。ところで、窓口シート2×2の4面掛けとして、頭合わせで中央のカラーマークを裁断したら、カラーマークが4番切手のシートと7番切手のシートが出現しなければなりません。少し違うと思いますが。
Posted by 山崎 at 2019年01月26日 17:51
山崎様ご指摘の通りで、GANの記憶違いでした。この刷版(いわゆる「実用版」「大判」)は窓口シート2×2の4面掛けですが、「頭合わせ」としたのは誤りで、正しくは「ケツ(尻)合わせ」でした。上2面と下2面は91~100番切手の列で互いに向き合っています。カラーマークは4個面のいずれも4番切手にあり、7番切手にはありません。以上の点は小林氏の確認も頂いています。山崎様、ありがとうございました。
Posted by GAN at 2019年02月16日 02:19
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