
前回は「呉局気付 セ45 セ41 ウ372」をご紹介しましたが、今回、新たに第2例目を発信(右上)・着信(右下)のセットで入手しました。誤記の疑いのない使用例が増えたことで、「3セット型」の意味と性格を確定することができたと思います。以下に続報としてお伝えします。

・第1セット:ヤルート島イメージ
・第2セット:第10海軍郵便所第6派出所(部隊名)
・第3セット:横須賀鎮守府第6特別陸戦隊=横鎮6特陸
特別陸戦隊は海軍の陸上戦闘専門部隊で、各鎮守府に直属して機動的に行動します。定まった駐屯地がなく移動がひんぱんなので、他の海軍陸上部隊と違って所在地は常に流動的です。特別陸戦隊のアドレス表記は例外的なものが多く、収集家泣かせの常連です。
一方、厚生省の「恩給加算調書」によると、横鎮6特陸は1942年8月24日から43年2月15日までギルバート諸島(の内のタラワ環礁ベティオ島)に派遣されていたことが分かっています。この間、ギルバート諸島には海軍の郵便機関は未開設で、タラワに所在地区別符ウ66が指定されたのも42年10月からでした。
所在地区別符がないとき、そこにいる海軍部隊のアドレスはどう定めるでしょうか。最も近い既設の郵便所気付とするのが合理的です。当時、ギルバート諸島に直近の郵便所はヤルートの第10郵便所第6派出所(部隊区別符ウ84)でした。こうして、「タラワの横鎮6特陸」は「ウ84気付 ウ187」を得たはずです。
ところが、区別符によるアドレス表示法では「気付」は省略されるので、「ウ84」はグリーニッチの所在地区別符と見なされてしまいます。誤解されないように派出所所在地のヤルート島イメージを表す区別符「ウ83」を頭(第1セット)に付けたのでしょう。この3セット表示は「所在地区別符未設定期のアドレス表記」とすれば納得できるのです。
前回の「呉局気付 セ45」のケースは他からの転入部隊が所属する(上位の)部隊名を第2セットとして加えた例でした。共通して言えるのは、移動・転属部隊や区別符未設定地の部隊が、「気付」の意味で所属上位部隊や直近の郵便所の区別符を第2セットとして加えていることです。
「3セット型区別符」は海軍の郵便物取扱例規にも規定が終始ありませんでした。必要に迫られた現場の、いわば知恵の産物だったのかも知れません。