
絵面は提灯行列する群衆が主題で、上部左右に逓信省庁舎と皇居二重橋の写

表面(宛名面)は洋風の横型です。日露戦争から太平洋戦争までの長期にわたって多種多様な恤兵はがきが発行されていますが、宛名面横型は他に例を見ません。切手貼付位置の角枠内に「恤兵はかき」、下部と左端に英文で次のような印刷があります。いずれも青色です。
ISSUED FROM THE RELIEF FUND BY THE I.J.WAR-MINISTER'S SECRITARIATE.
Printed by Toppan Printing Co.
「恤兵寄金により日本帝国陸軍大臣官房発行」「凸版印刷会社印刷」のような意味でしょうか。横書きに弱いGANには「FROM」と「BY」の関係をうまく訳出できません。絵面は写真を組み合わせた金色を含む多色印刷にエンボスを施し、大変手の込んだ作りです。明治末期から大正中期(震災前)に盛行した典型的な様式に見えます。
このような様式などから日独戦争時に発行された恤兵絵はがきと考えられます。補強する材料として、既に知られている日独戦争の恤兵絵はがきと同じ写真が今回の絵はがきにも使われていることを指摘します。

飛躍しますが、今回の絵はがきには英文が使われる一方で「郵便はがき」の表示がありません。この表記は内国第2種郵便物(はがき)には必須の要件でした。更に、日本のデザインとしてはなじみの薄い鷲が大きくあしらわれています。これらから、同盟国の英軍兵士用に提供されたものかとも考えられます。
今回の絵はがきの発行時期は二通りが想定されます。第1は既知の恤兵絵はがきに先行する初期の製造。既知の絵はがきはそれに続くシベリア出兵の恤兵絵はがきと形式が同じです。それらに先立つ試行的な作品という考えです。第2は逆に、既知の絵はがきの後の製造。図案がいかにも戦争に勝ち、それを祝うというテーマだからです。この場合は先述した英軍との関係が想起されます。
現段階ではどちらとも決めかねます。1種だけの単独発行とは考えられず、別図案の絵はがきやそれらの袋、実際の使用例などが出現するのを待って、更に考えたいと思います。