2017年01月30日

未だ懲りず偽造乃木書翰

fg1.png明治から昭和までの3代を通じて、乃木将軍は恐らく日本人が最も好きな軍人なのでしょう。「これでもか」とばかりにニセの乃木書翰が出現し、出回っています。ヤフオクでは出品が途切れる間がないと言っても過言ではありません。偽造封筒を添えたばかりに足が付いた最近の2例をご紹介します。

右図は北海道の古書店が入手したという「乃木書翰」です。共同通信が「乃木希典の直筆手紙発見」とさも大ニュースのような記事にして配信し、2012年1月14日付日本経済新聞などに掲載されました。子息の戦死や後継者に関する、素人受けぴったりの「極めて興味深い」内容だそうですが、そちらは置いておきます。

封筒は菊10銭切手を貼って書留扱いとなっています。小さな荒れた写真しかないので引受印の局名などは不明です。将軍が自宅から出した真正の書翰はすべて赤坂局引受になっています。それなのにこの封筒の書留ラベルが「小石川」なのはおかしい。引受印の局名がもし「赤坂」ならニセは決定的です。

fg1a.pngここでは裏面の付箋をはがした跡にわざわざタイするように押されている消印に注目しました。無理した拡大図をに示します。一見してB欄日付部の桁線とD、E欄櫛型の痕跡すらないのが、まず異様です。

局名は「赤坂」とも「広島」とも読めそうな不鮮明さですが、日付活字の「43.7.8」だけはどうにか分かります。ところが、これが箸にも棒にもかからないフォントを使ったゴム製の不出来な偽造印なのです。

赤坂局にせよ広島局にせよ、櫛型印の時刻活字は数字の直前にピリオドを配置する「前点式」のはずですが、「8」の日活字の直前にピリオドはなく、月活字「7」との中間というあいまいな位置にあります。「7」の前のピリオドも同様です。数字活字に付属して一体となっているのではなく、異様に大きな「ピリオド活字」として独立していることが明らかです。

かくして、消印がニセモノ。→もし書翰がホンモノだったらニセ消印をわざわざ作ってニセ封筒まで添える必要はない。→故に、書翰もニセモノ、という三段論法でアウトになります。余計な封筒を偽造しなかったらこの書状はあいまいなまま通っていたかも知れません。「雉も鳴かずば撃たれまいに」の類いの話です。

fg2.png一方、左図は1月31日締め切りのヤフオクに「軍神乃木希典書簡封書軸装」として出品されているものです。両方の封筒の将軍自筆のサインにご注目下さい。同一人の手蹟なのに、これほど違うのはなぜか。両方とも同じ理屈で真っ赤なニセモノだからです。

こちらの封筒では表面の菊3銭切手が赤坂局の日付印で引き受けられています。着印がないところが不自然です。ところで、この極めて明瞭な引受印がまったくいけません。

に示すように、外郭リングが異常に太かったり、「赤坂」の局名活字に「太教科書体」という実在しない異様なフォントが使われているのが、まずダメです。C欄時間帯の「后0-8」はあり得ない刻みで、これは偽造印の証拠として致命的です。

fg2a.pngこの当時、赤坂局を含む東京市内局の時間帯刻みは1時間ごとでした。しかも、櫛型印にはX、Y、Z型の全形式を通じて「后0-8」などという荒っぽい刻みはありません。せいぜい「后0-3」(Y3型)、「后0-4」(Z型)があるぐらいです。

従ってこちらも、消印がニセモノ→封筒が偽造→故に書翰本体もニセモノ、という理屈を累積する結果となりました。もっとも、出品者は商品説明の中で「当方では肉筆の保証できますが、真筆の保証は致しかねます。」とわざわざ断っています。

これを「多少の良心はある」と解すべきなのか、あるいは偽造を承知の巧妙な逃げ口上か。いずれにせよ、2通の書翰は「乃木人気」が世紀を超えてなお盛んな証拠、とは言えそうです。
posted by GANさん at 13:05
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